相続税対策:「贈与税の配偶者控除」

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    JUGEMテーマ:税金と確定申告

     

    前回、「相続時精算課税制度」についてお話しましたが、この制度は相続税がかからない場合、贈与税について大きなメリットがあります。

     

    今回は、贈与税のメリットだけではなく、相続税がかかる場合のその相続税対策の一つにもなる「贈与税の配偶者控除」についてお話します。

     

    ■贈与税の配偶者控除とは

    贈与税の配偶者控除とは、夫婦の間で居住用不動産または居住用不動産の購入資金の贈与が行われた場合、その年の基礎控除110万円に加え、2,000万円までが非課税となる制度です。

    つまり、110万円と2,000万円の合計2,110万円が非課税になるのです

     

    ■適用要件

    夫婦の婚姻期間が20年以上であること

    贈与の対象となる財産が、国内の居住用不動産または居住用不動産の購入資金であること

    贈与を受けた年の翌年315日までに、贈与を受けた者がその居住用不動産に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

    過去にこの制度の適用がないこと

     (この制度は同一夫婦間で一度しか受けることができません)

     

    ■節税効果

    では、実際にどのくらいの節税効果があるのか見てみましょう。

     

    <前提1

     家族構成:夫、妻、子供2

     夫の贈与前相続財産:6,000万円

     相続税基礎控除:3,000万円+(600万円×相続人3人)=4,800万円

     

     ● 贈与をしない場合

      ・夫が亡くなった場合の相続税

        6,000万円−4,800万円)×15%−50万円=130万円

     

     ● 夫から妻に2,000万円を贈与した場合

      ・夫が亡くなった場合の相続税

        6,000万円−2,000万円=4,000万円

        4,000万円<4,800万円 ∴ゼロ

      

      <参考>

      ・贈与税(配偶者控除を適用しない場合)

        2,000万円−110万円)×50%−250万円=695万円

     

    上記のケースでは、贈与をしない場合と2,000万円を贈与して配偶者控除を適用した場合とでは相続税に130万円の違いがあり、贈与をして配偶者控除を受けた方が有利になります

     

    ただし、夫よりも妻の財産の方が多い場合や贈与により妻の財産の方が多くなる場合、妻が亡くなった際の子供への相続の面で不利になりますので注意が必要です。

     

    <前提2

     前提1での夫の死亡後に妻が死亡

     妻の贈与前相続財産:6,000万円

     贈与した財産以外の夫の財産は子供2人が相続したものとする

     相続税基礎控除:3000万円+(600万円×相続人2人)=4,200万円

     

     ● 贈与をしない場合

      ・夫の死亡時の相続税 130万円

      ・妻の死亡時の相続税

       (6,000万円−4,200万円)×15%−50万円=220万円

      ・合計 130万円+220万円=350万円

     

     ● 夫から妻に2,000万円の贈与があった場合

      ・夫の死亡時の相続税 ゼロ

      ・妻の死亡時の相続税

       (6,000万円+2,000万円−4,200万円)×20%−200万円=560万円

     

    このように、配偶者控除を適用することによって夫の死亡時の相続税が有利になったとしても、妻の財産しだいでは夫と妻の相続税の合計で見ると不利になってしまうケースもあります。

     

    ■相続時精算課税との違い

    「相続時精算課税」は、父母(または祖父母)から子(または孫)への贈与の際、一定額まで贈与税を非課税にする代わりに相続時にその分まとめて相続税を課税する制度です。

     

    一方「贈与税の配偶者控除」は、夫婦間の贈与の際に一定額までは贈与税を非課税とし、贈与者が亡くなったときは、その贈与した財産は相続財産に含まれません。

     

    このように、この2つの制度は贈与者と受贈者との関係相続時の処理に違いがあります。

     

    また、特例制度の中には「期限内申告」が適用要件とされているものが多くありますが、「相続時精算課税」も期限内申告が適用要件とされています。

    しかし、今回の「贈与税の配偶者控除」は申告期限を過ぎても適用することができます

    この場合、「更正の請求」手続きが必要になりますが、平成23122日以後に法定申告期限が到来するものについては、法定申告期限から5年(贈与税は6年)さかのぼることができます。

     

    さらに、相続時精算課税の限度額2,500万円はその限度額に達するまで翌年以降に繰り越すことができますが、贈与税の配偶者控除の限度額2,000万円は控除額が余っても翌年以降に繰り越すことができません

     

    ■生前贈与との違い

    相続が発生した際、亡くなった日からさかのぼって3年以内に贈与があった財産は、贈与税基礎控除の110万円以下であって相続財産に加算されます。

     

    しかし、「贈与税の配偶者控除」の適用を受けた財産については、たとえ贈与を受けた年に配偶者が亡くなったとしても、相続財産には加算されません

     

    この相続財産に加算されない分については贈与税の申告を忘れないようにしましょう。

     

    ■最後に

    基本的にこの「贈与税の配偶者控除」は節税につながりますが、上記「節税効果」でもお話したように、財産の多い方への贈与は逆効果になってしまいます。

     

    また、一つの不動産で限度額を超えてしまう場合、持分贈与も可能ですので、気になる方は評価算定等も含め専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

     

     

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      相続税の課税の心配がないのに、生前贈与で贈与税を無駄に払っていることはありませんか?

       

      贈与税の課税方法には、「暦年課税」「相続時精算課税」2つがあります。

      「暦年課税」とは、贈与を受けた人が11日から1231日までの1年間に贈与を受けた財産のうち、基礎控除の110万円を超える部分について課税されます。

      一方「相続時精算課税」とは、複数年にわたり2,500万円の特別控除が適用されます

       

      これだけを見ると、「相続時精算課税」の方が断然有利なように感じます。

       

      しかし、この「相続時精算課税」はあくまでも贈与税の特別控除が適用されるだけであり、「過去の贈与を受けた分は相続精算(課税)します」ということを意味します。

       

      つまり、「2,500万円までの贈与はなかったものとみなし、そのかわり相続税の計算に含めて課税します」ということになります。

       

      ■暦年課税と相続時精算課税の比較

      具体的に数字を使って贈与税と相続税にどのような影響があるのか見ていきましょう。

       

      <前提1

       家族構成:父、母、子

       相続税基礎控除額:基礎控除3,000万円+(相続人2名×600万円)=4,200万円

       父の相続財産:3,000万円

       贈与形態:父から子へ現金200万円を贈与

       

      暦年課税の場合

       ・贈与税

         200万円−基礎控除110万円)×税率10%=9万円

       ・相続税

         3,000万円−200万円)<基礎控除4,200万円 ∴ゼロ

       ・合計負担税額 9万円

       

      相続時精算課税の場合

       ・贈与税

          200万円<2,500万円 ∴ゼロ

       ・相続税

          3,000万円<基礎控除4,200万円 ∴ゼロ

         ・合計負担税額 ゼロ

       

      <前提2

       前提1の相続財産を5,000万円とした場合

       

      暦年課税の場合

       ・贈与税

         200万円−基礎控除110万円)×税率10%=9万円

       ・相続税

         (5,000万円−200万円)−基礎控除4,200万円=600万円

         600万円×10%=60万円

       ・合計負担税額 69万円

       

      相続時精算課税の場合

       ・贈与税

          200万円<2,500万円 ∴ゼロ

       ・相続税

          5,000万円−基礎控除4,200万円=800万円

         800万円×10%=80万円

       ・合計負担税額 80万円

       

      このように、相続税がかからない場合は相続時精算課税の方が有利になりますが、相続税がかかる場合は相続時精算課税の方が不利になるケースがあります。

       注1:贈与税、相続税は累進課税となります。

          (課税価格が高くなるにつれ高い税率となります)

       注2:相続税がかかる場合は、贈与の方法や課税財産額によって有利不利が逆転することがあります。

       

      ■相続時精算課税の適用要件

      ・贈与をする者は60歳以上の父母または祖父母であること

      ・贈与を受ける者は20歳以上の子または孫であること

      ・贈与を受けた年の翌年の21日から315日までに贈与税の確定申告をすること

      ・確定申告の際、「相続時精算課税選択届出書」とその他一定の書類を添付すること

       

      ■注意点

      ・一度相続時精算課税を選択した場合、2,500万円に満たない部分は翌年以降に繰り越されます。

      ・その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択した場合、その年分以降その贈与者が亡くなるまでの全ての年においてこの制度が適用され、暦年課税への変更はできませ

      ・暦年課税の110万円の基礎控除は使えません。

      ただし、相続時精算課税を選択した贈与者以外からの贈与については基礎控除が使えます。

      2,500万円を超える部分については一律20%の贈与税が課税されます。

       課税された贈与税は相続時に相続税から控除されます。

       

      ■最後に

      贈与税を知っていてもこの相続時精算課税制度を知らないという方が多いようです。

      また、「期限内申告」が前提となるため、あとから申告をやり直そうとしても適用できません。

      そのため、本来節税できるはずの贈与税を支払っている方も多いのではないでしょうか。

       

      贈与や相続はそう何度もあることではありません。

      ですので、なおさら処理を慎重に進めていく必要があります。

       

      特例措置などもいくつかありますが、その一つとして今回の内容を参考にしていただければと思います。

       

       

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        平成2711日以降の相続開始から基礎控除額が引き下げられ、相続税の課税対象者が拡大されました。

         

        実際、この引き下げによって4.2%だった課税対象者割合が6%まで上昇すると税制調査会では見込まれています。

         

        まず、どのように変わったのか、その改正内容とその影響を見ていきましょう。

         

        基礎控除額の推移

        平成261231日以前

        基礎控除5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)

        平成2711日以降

        基礎控除3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

         

        例)法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人の場合の基礎控除額

         ・改正前 5,000万円+(1,000万円×3)=8,000万円

         ・改正後 3,000万円+(600万円×3)=4,800万円

         

          仮に相続財産が7,000万円だった場合の相続税負担額

          ・改正前

            課税対象額:7,000万円−8,000万円=▲1,000万円→ゼロ

            相続税額 :ゼロ

          ・改正後

            課税対象額:7,000万円−4,800万円=2,200万円

            相続税額 :2,200万円×15%−50万円=280万円

         

        相続税速算表

        基礎控除後の相続財産の額

        税率

        控除額

        1,000万円以下

        10

        3,000万円以下

        15

        50万円

        5,000万円以下

        20

        200万円

        1億円以下

        30

        700万円

        2億円以下

        40

        1,700万円

        3億円以下

        45

        2,700万円

        6億円以下

        50

        4,200万円

        6億円超

        55

        7,200万円

         

        このように、今まで相続税とは縁がないと思っていた人でも、この改正により課税対象者となる可能性が出てきたのです

         

        ● 自社株式の贈与

        そこで、今回は相続対策の一つでもある「自社株式の贈与」についてお話します。

         

        中小企業の多くは「出資者=経営者」の関係にあると思います。

        設立当時に出資した金額がそれほど多くなくても、業績の良い企業では、数年後にはその株の評価額が何倍、何十倍にもなってしまいます。

         

        上場会社の株であれば売買することができますが、自社株については誰かに売ろうとしても余程のことが無い限り買ってくれる人はいないでしょう。

        会社が継続する限り自分が持っていなければなりません。

         

        しかし、この自社株が相続財産に該当するため、相続の時点で多額の相続財産になる可能性があります。

         

        その対策として、後継者などに毎年その自社株を贈与し、申告と納税を行うのです

         

        贈与については年110万円の基礎控除がありますので、「この110万円の範囲内で毎年贈与を行えば税金がかからない」と思うかもしれませんが、税務署はそうは見てくれません。

        それらを一括で贈与があったものとしてみなされてしまいます。

        一括での贈与とみなされた場合、数年にわたって贈与を行ったとしても基礎控除は110万円のみで多額の贈与税が課せられてしまいます。

         

        そうならないために少しずつ贈与税の申告を行い、納税して贈与の実態を残すのです。

         

        試算

         基礎控除後の課税金額が1,000万円(内、自社株600万円)の場合

         ・自社株の贈与無し 相続税額100万円

         ・自社株の贈与有り

           自社株600万円を120万円ずつ5年に渡って贈与

           贈与税 1万円×5年=5万円

           相続税 40万円

           5万円+40万円=45万円

         

        上記の試算結果でもわかるようにこれだけの差が出てきます。

        更に、年数を重ねれば重ねるほど節税の効果は大きくなりますので、早めの対策をお勧めします。

         

        ただ、株の評価は複雑ですので、自分でやろうとしても時間がかかったりミスの原因にもなりますので、専門家にお願いしたほうがいいでしょう。


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